木島文義×江藤真規対談企画「親にできる教育って?」~教育に重要なのは親へのフォロー~

塾の選択基準は親の直感
江藤真規氏(以下、江藤):そもそもの話になりますが、学校と塾の違いは、どのようにお考えですか。
木島文義氏(以下、木島):現在の教育制度は、基本的に戦後直後の仕組みですよね。
当時は高度成長・大量生産の時代で、国民に最低限の知識を一律に伝えることが第一の目的でした。現在では社会環境も変化しています。
にも拘わらず、当時の教育制度を基盤に据えているので、少なからずひずみが生じています。
江藤:ひずみというと、いろいろと思い浮かびますが、具体的にはどのようなことでしょ う。
木島:例えば、公立の小学校では、中学受験対策の勉強をさせないですよね。中学受験がこれほど一般化しているにも関わらずです。
もしかしたら、教育の平等の観点で、一部の子供を特別扱いできないのかもしれません。
だけど、個人の能力に基準をおくと、それってもしかしたら不平等かもしれないですよね。
国家の仕組みは簡単には変わりませんから、そういったひずみを受け入れるのが、塾だと思います。
江藤:塾に子供を入れようかと考えた時、どの塾に入れていいのか、そもそも塾に入れる
べきなのかどうか、判断基準に悩んでしまいます。
判断基準という部分で、もう少し掘り下げると、塾に正解・不正解はないと思うんですが、子供にあうかあわないかで、親が塾を見分けるポイントは、ありますでしょうか。
木島:確かに塾の数は多いですが、子供が通える範囲というのはだいぶ限られると思います。まず地域を絞った上で、実際に教室を見てくることですね。
塾の経営者としては、本当は、理念とか実績とかを判断基準においていただきたいですが、どんなに立派なうたい文句を飾っていても、子供が通えなければ意味がないですし、現地に赴かないと本当かどうかを確かめる術はありません。
江藤:そうですね。肌で感じないとわからないことはたくさんありますね。
木島:教室を見学して、この先生になら大切な子供を安心して預けられるかどうか、本当に我が子のことを思ってくれるかどうか、という一点だけで大丈夫です。
江藤:まずは親が自分の我が子を思う気持ちを信じましょう、あなたのいいと思うところなら大丈夫ですよ、ということですね。
木島:そうです。だって大切な我が子ですよね。この人に預けたいか預けたくないかという、自分の直感を信じていいと思います。
江藤:自分を信じて、子供の向かいたい方向に関係するものを選んでいくということですね。
木島:どんないい学習プログラムをもっていても、預けた先の先生が、信頼を持てるかどうかというのが大切ですよね。
すごそうなプログラムがあるんだけれども、どうも先生の説明が、いま一つよくわからなかったら、信頼にはつながらないですよね。
だから親御さんのもっている不安を解消するために、本当にその教室の先生が誠意をもって説明してくれるようならば、信頼できると思います。
子供は大人の姿を見て育つ
江藤:近年では塾通いを始める子供が、かなり低年齢化していますよね。3年生とか4年生になると、塾に行かせた方がいいのかどうかって迷ってしまいます。
早期に塾に行くことは、メリットがあるんでしょうか。
木島:勉強の楽しさを幼いころに教えてあげて、学習習慣を早期に身につけさせることじゃないでしょうか。旅行をしたり本を読んだりするのと同じで、新たな発見に触れた時の楽しさを教えてあげる。それによって、遊びに行くのと同じ感覚で、じゃあこの時間は勉強しようか、という習慣が身に付く。
受験勉強のためというより、学びは子育てでも趣味でも仕事でも、大切ですよね。それに、学びの楽しみを早く知った人は、視野が広がるし、より豊かに人生を楽しめるんだと思います。だからそんな楽しいものを子供に早く伝えておかないて手はないなって感じるんです。
江藤:先生がそんな風に本当に勉強を楽しいものだと思っていたら、子どもたちにも伝わりますよね。
家庭でも勉強の楽しさを教えましょうよ、というテーマの本を、私は出版したんですが、おっしゃることには共感できます。
木島:私が一番家庭で実践してほしいのは、親御さんが子どもの前ではあまりだらだらするのはほどほどにして、好きな本を読んだり、一生懸命勉強したりといった姿を見せてほしいんです。
江藤:子どもはやっぱり親の姿を見ていますよね。
木島:親御さんの学習習慣やら読書習慣やらといったあたりが、いかに子供に影響を与えるかです。
趣味にはまるとかでいいんです。
何か熱中するものを親御さんももって、たとえば、一緒に映画を見に行くとか、美術館にいくとか、劇団四季を観にいくとか。
子供と一緒にやると、子どもの感性も磨かれて、そういった中で勉強にも親が関心を持てば、子どもは自分でもやるようになります。
保護者とのコミュニケーションは塾の責務
江藤:いろいろ親も家での子供の様子を見ていて先生方にうかがいたいこともあるんですが、気を遣ってしまって、なかなか声をかけられない。
塾の先生側というのは保護者とのコミュニケーションというのは、大事なものとしてお考えなのでしょうか。
木島:塾にとってはそれが一番大事じゃないでしょうか?
塾のサービスというのは、サービスを受ける人(こども)と、その対価としてお金を出してくれる人(親)が違うんですよ。
江藤:そうですね。
木島:普通、お金を払うと、そのサービスは払った人が受けますよね?
だけど塾の場合は、お母さんは、お金を出すんだけれども、本当にサービスを受けるのは子供なんですね。
先ほどの塾の判断基準にも関わってきますが、塾の最低限の責務である、子供の様子をご家庭に連絡してこないような塾は、やめた方がいいですよ。
江藤:お金を払ってるのは自分なんだから、自分も知る権利があると。
木島:そうだと思います。
遠慮してはだめですね。
子供が受けるサービスの対価としてお金を払っているわけですから、当然その権利はあると主張しても問題ないと思います。
江藤:聞いていいんですね、ほっとします。
木島:うちの場合には、4月・5月に生徒面談月間、5月・6月に保護者面談月間、そして、6月7月に今までの成果を電話報告する月間を設けています。
期間を設けて、直接の対話なり電話なりを月間で行います。
そして、日常でも、生徒が満点を取ったりいい変化をしたりすると、即電話します。
だから人によってはうっとうしく感じるほどかもしれませんね。
江藤:でも、塾での様子がすごくわかりますね。
家での会話にもつながってくると思います。
木島:私はよくこんな電話してますもん。
「お母さんね、お子さんのことよく叱っていると思うんですけど、今回すごくいい点を取ったんで、お母さんからも褒めてあげてくださいっ」て。
褒めて育てるが、湘南ゼミナールの基本方針ですからね。
いかに子供を褒めて、認めて、承認欲求を満たしてあげて、内発的に勉強する気にしてあげるかですよ。
親御さんのことも褒めたりします。
「お母さんね、しっかりした教育方針を持っているようなのでね、考え方のしっかりしたお子さんが育ちますよ」とか、「とってもいい家庭だと思いますよ」とか。
江藤:それって素晴らしいですね。
すごくこう、セルフイメージがどんどん下がってくるんですよね。親ってなぜか。
木島:そうですね。 なぜか子育てにすごく自信を持てないじゃないですか。 子どもの点数が悪いと親まで落ち込んじゃうでしょ。
江藤:自分のせいじゃないかって思って。
木島:親御さんにいかに自信を持たせるか、なんです。
江藤:親が元気でないと子供は元気にならないですからね。
子供は天からのギフト
江藤:母親のこれが知りたい的なところで、伸びる子の親とはどんな親でしょうか。
木島:目先にとらわれるのではなく、その子の未来とか自分たちの中でどうあってほしい という教育観とか持っているご両親ですね。
それも、放任はだめですが、子供の興味・関心を内発的に引き出していけるような、そういう働きかけをしているご家庭が伸びますよね。
江藤:ロングスパンで考えて、その子の適性・強みをよくわかった上で、ということですね。
木島:付け加えるなら、我が子を客観視できるような、ご家庭がいいですね。
江藤:俯瞰できるというような意味合いでしょうか。
木島:語弊のある言い方かもしれませんが、子どもは社会の財産ですので、社会に早くお返ししようという考え方を持つことです。
我が子を「所有」するのではなく、その子にとっての本当の幸せってなんだろうというところを、常にその子の成長のプロセスの中で考えていけることです。
江藤:とかく自分の産んだ子だから、自分と同じに感じる、オーバーラップさせて感じてしまうんですが、「社会にお返ししよう」という一言で、かなりの気づきがありますね。
木島:そうです。親は先に死んじゃうんです。
子どもが本当に豊かであるというのがどういうことだろうと考える時に、親が子どもに求める価値観が、子どもが成長した時に本当に社会に通用する価値観とは限らないですよね。
東大に入ったときにはすでに、就職に関して学歴がほとんど価値のない社会になっているかもしれない、もしくは教育制度そのものがかわっているかもしれない。
目先の点でしか見ていない、一点集中的な見方だと子供の可能性も何もないですよね。子供は親の所有物じゃなくて、たまたまその家庭に預けられるものだから、ある年齢にな
るとお返しするものです。
自分の意志で、好きなような子供を産み落とせないでしょう。
子供は、天からのギフトなんですよ。
江藤:すごくわかります。 私は昔から子供に対して「あなたが生きがいなの」とずっと言わないって決めていました。
木島:そうですね、子供は自分に全部のっかってくる親なんかうっとうしくてしょうがないです。生き生きとしているお父さんお母さんを見ると、子供もそうなりたいと思うじゃないですか。
江藤:天からギフトを授かってから、我が子に対して、家庭でやった方がいいことはありますか。
木島:子供にいったことは自分も実践してくれればいいと思います。計画を立ててなさい、と子供にいうなら、計画を立てるんです。率先垂範がリーダーシップとして一番わかりやすいじゃないですか。
江藤:それが親にとっての喜びにもなります。成長できますよね。勉強に落とし込んだ場合には、親も学びなさいと。
木島:子供そのものへの信頼感。
心のどっかでわが子を信じるような、その意識を持つと伸びますよね。勉強しろって信じてないから言うわけじゃないですか。もし不安だったら、勉強の価値を語る。価値を語る一番の方法は、自分が勉強をしている。伸びる環境を提供していれば、子どもは伸びる。
江藤:教育全般についてお伺いしたいのですが、受験戦争はますます過熱しています。
受験戦争についてはどうお考えですか。
木島:だからこそ教育が重要だと思います。
自分の判断の軸を持っていれば、周囲に流されることはありません。
親も学んで、自分の判断軸を持たないといけない。
子供への教育によって、そのようなことが自発的にできる将来の大人を育てたいのです。
江藤:今いる大人たちが、ぶれない自分の判断軸を持つためにはどうすればいいいでしょう。
木島:学ぶことですね。
子供の成長に関する本をたくさん読んでいくなり、教育に関わりの深い人と話したり、子育てに成功していると思う家庭に接してみる。
そういう努力を面倒くさがらずにやれるかどうかですよね。
雑誌の記事を読んですぐ動くような親にならずに、情報を選別して、自分の軸をいかにもてるか。
子供の性格、母親の性格、父親の性格、それらを踏まえてどういう教育をすればいいのかという。
江藤:親の役割は大きいですね。
木島:私なんかは、子供と話してみるとその家庭が見えてしまいますね。
大人であっても、就職試験に受けに来ている青年たちにも必ず、どんなご家庭だった?って必ず聞くようにしています。
どこかで何かひっかかりがある場合には、たいてい家庭がうまくいっていないものです。
江藤:では最後に、いろいろな悩みを抱えながら子育てをされているお母さんがいらっしゃるとしたら、どんな言葉をかけてあげますか。
木島:子育てに悩む母親の大半は、一人で思い悩んでいらっしゃると思うんですね。
そんな時は、是非、信頼できる塾の先生に悩みを打ち明けて欲しいと思います。少なくとも湘南ゼミナールのスタッフにはそれを受けとめられるよう求めています。
悩み相談を全部受け取る、ような感じで。それ必要ですよね。
対談者プロフィール
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湘南ゼミナール代表取締役 木島文義 1952年生まれ。母親の実家はお寺。 |
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Saita coordination代表 江藤真規 「才能を開花させる」をテーマにした教育コンサルディングオフィス「サイタコーディネーション」代表。 |
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